2025年5月22日、アメリカ連邦議会下院で可決された「ワン・ビッグ・ビューティフル法案(One Big Beautiful Bill, OBBBA)」に対し、メキシコ政府が強い抗議を表明しました。
特に、不法移民による送金に対する5%の課税案について、メキシコ政府は「不公平かつ差別的」と批判。シェインバウム大統領は「米国在住のメキシコ人の消費が100億ドル減少する」と警告し、法案の即時撤回を求めています。
「ワン・ビッグ・ビューティフル法案」とは?
この法案は、ドナルド・トランプ前大統領が掲げる「アメリカ第一主義」を法制化する大規模な予算調整法案です。
正式名称は「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」で、トランプ氏の名言を引用する形で命名されました。法案は賛成215、反対214の僅差で下院を通過し、今後は上院での審議に進む予定です。
主な内容
・減税延長
2017年のトランプ減税(法人税・個人税の優遇措置)の延長・拡張
・歳出削減
メディケイド(低所得者向け医療保険)の削減
不法移民への給付停止
債務上限(デットシーリング)の引き上げ:4兆ドル増額
・新たな税制・免除措置
不法移民による海外送金に5%課税
時間外労働・チップへの課税を2028年まで免除
・その他
国防・国境警備費の増額
AIシステムへの州・自治体による規制を10年間禁止
法案への批判も多数
今回の法案は1,116ページにも及び、その内容は議会での採決の数時間前にようやく公開されたことから、まだ明らかになっていない条項も存在する可能性があり、批判の声も上がっている現状があります。
経済評論家のピーター・シフ氏は自身のX(旧Twitter)で「この壮大で美しい法案には、財政赤字を削減する条項が1ページもない。むしろ赤字を膨らませるだけの詐欺的な法案だ」指摘しました。
また、米議会予算局(CBO)は、この法案によって今後10年間で3兆8000億ドル(約546兆円)の財政赤字が増加する可能性も示しています。
メキシコへの影響
アメリカに住むメキシコ人からの母国への送金は、メキシコ経済にとって極めて重要です。2024年には年間600億ドル以上の送金が記録されており、これは観光収入や石油輸出を上回る重要な外貨収入源となっています。
今回の法案で送金に5%の課税が導入されれば、その金額は大幅に減少し、メキシコ国内の消費や経済成長に深刻な影響が出ると見られています。
クラウディア・シェインバウム大統領は「この課税が実施されれば、メキシコ人の消費は100億ドル(約1兆4000億円)減少する」とし、アメリカ政府に対し強く抗議しました。
今後の動きは?
この法案は今後、上院での審議を経て、早ければ2025年8月に最終成立する可能性がありますが、与野党の間で意見の対立も大きく、特に不法移民や海外送金への対応については、地域間・国際間の緊張を高める火種となる可能性があります。
特に隣国メキシコをはじめとする移民経済には深刻な打撃を与える可能性があるため、今後の上院での審議や、各国の反応にも引き続き注目していきましょう。